「資格ナシ!経験ナシ!ガイドヘルパーのはじめ方」
ガイドヘルパーについて知りました。
楽しそうでやりがいも感じるのでガイドヘルパーをはじめてみたいのですが、障がいのある人と関わった経験がありません。
障がい福祉に関する資格も持っていません。
そんな私がガイドヘルパーをはじめるにはどうしたらいいのでしょうか。
(第1回)「登録する事業所を決めよう」
ガイドヘルパーをはじめるためには次の4つのステップが必要です。
(1)「登録する事業所を決める」
※まずは「移動支援事業所」に登録しましょう
(2)「資格を取る」
※資格は必要ですが、最初はなくても構いません
(3)「必要なものを用意する」
※仕事に向いた服装やあると便利なアイテムなどについて押さえておきましょう
(4)「SNSで仲間を作る」
※ガイドヘルパーは一人仕事。仲間との情報交換や学び合いは大切です
今回は第1回「登録する事業所を決めよう」です。
ガイドヘルパーをはじめるには「移動支援事業所」に登録する必要があります。
まずはどの事業所に登録するか決めてしまいましょう。
「まだ資格も取っていないのに、登録する事業所を先に決めてしまうの?」と思われるかもしれませんね。
実は、無資格でも研修生として登録できたり、資格取得のための受講料を負担してくれる事業所もあるのです。
「先に事業所を決めてしまう」のは、決して珍しくありません。
では、どの事業所に登録(就職)すればよいのでしょうか。次の3つの観点から検討してみましょう。
1.時間帯と地域から考える
2.時給・各種手当・研修から考える
3.事業所の掲げる「企業(法人)理念」から考える
1.時間帯と地域から考える
ガイドヘルパーの勤務体系は大きく分けて2パターンです。
自分がどちらの働きかたをしたいかによって、登録する事業所を選択しましょう。
(A)「平日の朝夕」中心に働く(1~2時間程度)→自宅に近い事業所がよい
(B)「土日祝」中心に働く(5~8時間程度)→自宅から多少離れた事業所でもよい
ガイドヘルパーは、
・まず自宅から利用者宅(または通所先)へ行き(=通勤時間)、
・利用者と一緒に移動し(=勤務時間)、
・勤務終了後自宅へ帰ります(=通勤時間)。
一般に利用者は事業所所在地の周辺に住んでいる方が多いので、自宅に近い事業所に登録すれば利用者宅(または通所先)も近いということになり、通勤時間も短くなる可能性が高いでしょう。
従って、
(A)「平日の朝夕」に短時間働きたい人は自宅に近い事業所に登録するとよいということになります。
通勤に1時間以上かかるようでは、朝の1時間の勤務のために往復2時間も通勤することになってしまいます。
逆に、
(B)「土日祝」中心に働きたいという人は勤務条件によっては多少自宅から離れた事業所に登録してもよいでしょう。
休日のガイドは比較的長時間の勤務となることが多いので、通勤時間が多少長くてもつりあいが取れます。
平日は自宅近くの事業所、土日は別の事業所で、という働きかたもあります。
2.時給・各種手当・研修から考える
次は、各事業所のホームページや求人サイトなどで、「時給」「各種手当」「研修」について調べましょう。
地域が同じなら時給にそれほど大きな差はありませんが、手当や研修は事業所によって違いが出ま
す。
各種手当の中でも、とくに「休業手当」の有無は重要なポイントです。
ガイドヘルプは、他の訪問系サービスと違い、利用者が体調不良等で外出を取りやめてしまうとキャンセルが発生するのです。
そんな時に休業手当が支給されるかどうか、よく確認しておきましょう。
また、研修の内容も重要です。
新しい利用者と初めての外出をする際は通常、先輩ヘルパーが同行して引継ぎをします。
が、同行しての引継ぎは初回だけなのか、自分が自信をもって働けるまで同行を続けてくれるのかなども事前に確認しておくと良いでしょう。
実地での研修以外に座学での研修もあると安心ですが、事業所に出向いて受講するのか、eラーニングなどで自宅でも受講できるのかについても確認しておきましょう。
研修に対して手当が出る事業所もありますよ。
3.事業所の掲げる「企業(法人)理念」から考える
そのほか事業所選びのポイントとして重要なのが、事業所の「企業(法人)理念」です。
移動支援は小規模な事業所が多いこともあり、事業所を運営する企業(法人)の理念や方針が、支援のスタイルに大きく表れることがあります。
事業所のホームページやSNSなどをチェックし、あらかじめ雰囲気を見ておくと良いでしょう。
事業所によっては先輩ヘルパーや代表者の話が聞ける動画も見られます。
以上、大まかですが、事業所選びについてお話ししました。
1.時間帯と地域から考える
=まずは自分の希望する働きかたから働く時間帯と事業所の地域を決める
2.時給・各種手当・研修から考える
=続いて地域内にある事業所の勤務条件(時給・各種手当・研修)をチェックする
3.事業所の掲げる「企業(法人)理念」から考える
=そして企業(法人)理念も確認する
という順番で決めれば、あなたに合った事業所が見つかることでしょう。
次回は「資格の取り方」についてです。
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(第2回)「資格を取ろう」
今回は「知的障がい者ガイドヘルパー」になるために必要な資格についてお話しします。
1.どの資格をとればよいか
自治体によって多少違いがありますが、次のいずれかの資格が必要なところが多いです。
(1)「介護職員初任者研修修了」
(2)「知的障がい者移動支援従業者(ガイドヘルパー)養成研修修了」
どちらの資格を取ればよいのでしょう?
まず(1)の「介護職員初任者研修修了」ですが、以前は「ホームヘルパー2級(旧ヘルパー2級)」と言われていました。
研修を開講している学校は比較的多く、試験もありません。
高齢福祉の分野で働くには必須条件になっている業種も多いので、思い切って取得してしまっても良いでしょう。
しかし、こちらは費用と時間がかかります。
そこでおすすめしたいのが、(2)の「知的障がい者移動支援従業者(ガイドヘルパー)養成研修修了」です。
これは「知的障がい者移動支援従業者養成研修」を受講した、という意味です。
おおむね3日間の講習で取得することが出来ますので、(1)の「介護職員初任者研修修了」よりは取得しやすく、試験もありません。
ガイドヘルパーをはじめたいという方はこれを取得すれば十分です。
2.「知的障がい者移動支援従業者養成研修」の概要
おおむね3日間(座学2日間+実習1日間)で取得できます。
研修の内容は、社会福祉の歴史から、障がい福祉の成り立ち、ガイドヘルパーとして実際働く上での技術的なノウハウまで、多岐にわたります。
受講するための条件はありません。
障がい福祉の経験や知識が全くない方でもわかりやすい内容になっています。
3.どこで研修を受ければよいか
「知的障がい者移動支援従業者養成研修」を開講している機関・団体は少なく、頻度も多くありません。
どこで取得すればよいかは自分で調べる必要があります。
どのようにしらべれば良いかお話しします。
(1)所属している事業所に訊く
一番簡単なのは、自分が所属している事業所に訊くことです。事業所やご自身の自宅から近くて通いやすい研修を紹介してくれるはずです。
(2)ネットで、地元で開講されている研修を調べる
自分の住んでいる地域の研修情報をインターネットなどで検索して調べることも出来ます。
例えば横浜市の場合、市のホームページに直近2か月程度先までの研修情報が掲載されており、会場や日程、受講料などを調べることが出来ます。
自分の通いやすいものを探してみましょう。
なお日程は、開催している団体によって土日中心だったり平日中心だったりします。
4.研修に参加する
研修には受講料がかかります。
金額は開催団体によって異なり、テキスト代として数千円というところもあれば数万円かかるところもあります。
事業所で受講料を負担してくれるところもありますので、必ず所属している事業所に確認するようにしてください。
また、自治体によっては受講料の助成金制度が使えるところがあります。
例えば横浜市の場合、「神奈川県内で開講されている研修を受講後、横浜市内の移動支援事業所で1回以上働いた」ことを条件に、上限2万円まで受講料が助成されます。
申し込み前に必ず日程の確認をしてください。
研修日程すべてを受講することが必要なので、他の予定と重なって受講できない日が発生しないよう気を付けましょう。
受講最終日にその場で修了証を受け取ることが出来ます。
修了証を受け取ったら、所属している事業所にコピーなどを提出する必要がありますので、無くさないように大切に保管してください。
今回は、資格取得についてお話ししました。
「知的障がい者移動支援従業者(ガイドヘルパー)養成研修」を受講しましょう。
自分の住んでいる地域や受講料などを考慮してどこで受講するかを決めましょう。
事業所に所属し、資格を取ったらいよいよ実際のガイドに向かいます。
次回は、「ガイドヘルパーに必要なものを用意しよう」です。
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(第3回)「必要なものを用意しよう」
ガイドヘルパーとして働くにはどんなものが必要なのか?
今回は、用意しておいた方がいいもの、あったら便利なものについてお話しします。
1.服装について
ガイドヘルパーの服装は「動きやすいこと」が第一。
基本は以下のとおりです。
(1)長い髪は、介助の際利用者に当たらないよう、まとめておく。
(2)ピアスやアクセサリーは、利用者が興味を持って取ってしまわないよう、外しておく。
(3)胸元が大きくあいた服は着ない。
(4)靴は、移動中に脱げてしまわないよう、かかとのあるものやヒールの低いものを履く。
(5)カバンは、両手の空くもの(リュックや肩掛けバッグ)にする。
いずれもあくまで「基本」ですので、利用者によっては気を使わなくて良い項目もあります。
例えば、身体介助が不要な利用者の場合には、髪をまとめる必要はありません。
また、ピアスやアクセサリーの着用についても、特にそれらを気にしない利用者の場合は問題ありません。
不意の動きでヘルパーの身体に接触する心配のない利用者の場合も同じです(支援中ピアス等を紛失したとしても補償はされませんが)。
同様の理由で、両手の空くカバンでなくてもよいこともあります。
しかし、どんな利用者が相手でどんなことが起こるか、新人ヘルパーが予測するのは困難です。
慣れないうちは基本を守るようにしましょう。
もう一つ大切なことは「状況に合わせた服装を身に着ける」ということです。
動きやすい服装だからといって上下スウェットでは、街中でのショッピングやレストランでの食事の際、一緒にいる利用者が恥ずかしいと感じるかもしれません。
自分が、友人や家族など大切な人とその場所へ出かけるならどういう服装で行くかを考えるようにするといいでしょう。
2.カバンについて
支援中はいろいろなことを想定して行動する必要があります。
「利用者が転倒しそうになる」「興味のあるものを見つけて急に走り出す」といった状況に対処するためには、常に両手を空けておかなくてはなりません。
そこで、リュックや肩掛けバッグ(またはボディバッグ)がおすすめです。
(1)リュック
<メリット>重いものを入れても体への負担が少ない・長時間歩いても疲れにくい
<デメリット>荷物を出し入れするたび背中から降ろさなければならない・夏場は暑い
(2)肩掛けバッグ(またはボディバッグ)
<メリット>荷物の出し入れが簡単
<デメリット>重いものを入れると肩に負担がかかる
一日中外出するときはリュックを使い、短時間の外出で交通機関を多用する(=財布の出し入れが多い)ときは肩掛けバッグにする、といったような使い分けができると良いでしょう。
3.そのほか必要なもの
(1)筆記用具
記録用。字やイラストで利用者に何か説明する際にも使います。
(2)ヘルパーの印鑑
記録などに押印が必要な場合に使います。
(3)雨具
利用者によって、レインコートと傘を使い分けましょう。
傘を上手にさすことが出来ず、ヘルパーと一緒に大きな傘に入ることを好む利用者もいます。
(4)ハンドタオル・ポケットティッシュ・ウェットティッシュ
利用者自身も持っていますが、とっさの場合はヘルパー持参のものを使うこともあります。
(5)携帯電話、スマートフォン
(6)消毒用アルコールスプレー
4.あったら便利なもの
(1)LEDのハンディライト
冬の住宅街などでは、17時を過ぎると辺りが真っ暗になってしまうことがあります。
LEDのライトがあると、車や自転車への合図にもなり安心です。
100均のもので充分です。
今回は、ガイドヘルパーをするときに必要なものなどについてお話ししました。
利用者や外出目的に応じて服装や持ち物を変えましょう。
また、事業所で定められたルールがある場合がありますので必ず事前に確認しましょう。
次回は、いよいよ最終回「SNSで仲間をつくろう」です。
(第4回)「SNSで仲間をつくろう」
今回は最終回。SNSで仲間とつながる方法についてお話しします。
ガイドヘルパーをはじめるため、事業所に登録し、資格を取得、必要なものを用意しました。
これからいよいよ実際のガイド活動を始めることになります。
ガイドヘルパーは、利用者の支援を「1対1」で行なう仕事です。
もちろん、事業所と連絡を取ることはありますし、自分以外のヘルパーと会う機会(集合研修等)もありますが、基本的には一人職場です。
そのような環境の中で自分のスキルを上げたり世界を広げるためには、SNSを活用して他のヘルパーとつながることが有効です。
1.SNSでフォローする
SNSで他のガイドヘルパーとつながりましょう。
自分の事業所のSNSアカウントがあればまずはそれをフォロー。
続いてそこを入口に、他の事業所やヘルパーのアカウントを見つけてフォローしてみましょう。
「#(ハッシュタグ)ガイドヘルパー」で検索すると見つけやすくなります。
2.SNSで発信する
他のヘルパーとつながるだけでなく、自分でもガイドヘルパーの仕事について発信してみましょう。
その際、次のようなことに気を付けましょう。
(1)個人情報を発信しない
利用者や利用者家族の個人情報(氏名・住所・勤務先・通所先・家族構成・病名・障がい名等)の発信はしてはいけません。
利用者の自宅に近い地域の情報も避けましょう。
(2)支援中は撮影や投稿をしない
支援中は、写真・動画の撮影をしてはいけません。
写真に利用者本人が写っていなくてもNGです。
支援中の写真・動画を掲載しているアカウントもありますが、これは事業所の広報を目的としたもので、事前に事業所と利用者の同意を得て、説明をし、撮影時の安全確保を必ず行っています。
ヘルパー個人が勝手に上げているものではありませんので、注意しましょう。
利用者が自分のスマートフォンやデジカメなどで撮影することをヘルパーが支援することは問題ありません。
(3)他のヘルパーにとって役に立つ情報を発信する
例えば実際に訪れた場所や施設の、良かった点(車いす利用の方が使いやすかったなど)を投稿すると、他のヘルパーにとって有用な情報になります。
ただし、場所や日時などで利用者の個人情報が特定されないよう注意しましょう。
(4)ガイドヘルパーの仕事を通して自分が感じたことを発信する
個人が特定されない内容で、自分が感じたことを発信しましょう。
他の人が見て「自分もガイドヘルパーをやってみたい」と思わせるような内容になっていれば、仲間がひろがることにつながります。なお、投稿は業務時間外で行いましょう。
(5)ポジティブな内容を心がける
利用者・事業者の困ったケースや、嫌だったことを多く発信しているアカウントがあります。
そのような発信に共感のコメントをもらうと自分が感じたネガティブな感情が軽減するからだと思いますが、こういった内容の発信を続けていると、同じようなタイプのフォロワー(ネガティブな発信をするアカウント)ばかりが集まってきてしまいます。
「自分のスキルを上げたい」「仲間をつくりたい」という本来の動機からかけ離れたSNS利用になってしまうので、ポジティブな発信を心がけるようにしましょう。
全4回にわたり、ガイドヘルパーのはじめ方についてお話ししてきました。
「ガイドヘルパーをはじめたいけど障がい福祉に関する知識も経験もない!」という皆さんの頭の中に、はじめ方についてのイメージが浮かんできていたら嬉しいです。
今後は、このページでガイドヘルパーの実務に役立つ情報をお話ししていきますので、そちらもご覧ください。